志楽トピックス

温泉水を飲んで、免疫力を高めよう!

2018年8月21日 ニューズレター
志楽ニューズレター第十号

温泉水を飲んで、免疫力を高めよう!

 

八ヶ岳縄文天然温泉「蓼科志楽の湯」は、昨年12月9日に長野県諏訪保健所より「公衆浴場の経営」が許可されたのに続き、12月22日には同保健所より飲泉療養のための飲泉許可が下りました。その泉質は、イオン成分のバランスが絶妙で“芸術的源泉”と言われています。主な効能は、肥満症、糖尿病、慢性便秘、慢性消化器病、通風、胆石症、慢性胆嚢炎などです。そこで、今回、わが国唯一の温泉科学の民間研究機関である財団法人中央温泉研究所の甘露寺泰雄所長に、温泉の効用、飲泉などについていろいろお話をお伺いしました。

 

聞き手・グループダイナミックス研究所所長 栁平 彬(サカン)

 

八ヶ岳縄文天然温泉 尖石の湯

 

◆温泉の持つ総合力で、飲泉の効果を最大限に高める

―温泉には、いろいろな成分が溶け込んでいて、それぞれに効能があるわけですね。

甘露寺: 温泉には免疫機能を高め、ストレスを解消し、全てのバランスをうまく調整するという大きな働きがあります。さらに、日本の温泉は泉質が豊富で、大別すると酸性の湯は水素イオンに殺菌効果があるので、特に皮膚病に効きます。一方、アルカリ性の湯は炭酸イオンが皮膚の脂肪分を分解してツルツルにするので美肌効果があります。珪素は美容のほかに神経痛にも効果があるといわれています。湯に浸かるだけでなく、珪素を含んだ泥(鉱泥)でパックすることも美容法の一つとして行われています。炭酸ガスは血液中に吸収されると血管を拡張する働きがありますので、血行がよくなり、心臓などの循環器系に良い働きをします。

また、化石海水はナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどが豊富に含まれているので、保温効果があります。さらに肌の湿り気を保つ保湿効果(モイスチャー効果)もあります。もっとも、最近の温泉医学では、成分云々よりも、温熱効果や遠隔効果を重視する傾向にあります。最も重要なのが温熱効果で、41~42度の湯に10分間程度浸かると、ストレス解消になります。これは温泉でなくても一般家庭で入浴しても得られますが、できるだけ大きなお風呂に入ってゆったりすると、より大きな効果が得られます。遠隔効果というのは、ふだん生活している土地を離れて、非日常的な体験をするというものです。それによって、身体や心の乱れたものを元に戻す、いわゆる調整効果が得られるのです。

 

―飲泉については、いかがお考えでしょうか。

甘露寺: 日本では、ヨーロッパほど飲泉の習慣は盛んではありません。自然環境や土壌の違いもありますが、ヨーロッパの温泉は成分が多く含まれていて、濃いので、飲みにくい反面、薬効が大きいのです。便秘解消や肥半症治療に効果があるようです。温泉を飲む習慣は古く、ギリシア・ローマ時代からあったといわれています。一方、日本の温泉は全般的に含有成分が少なく、薄いので、口当たりがよく飲みやすいのですが、飲むだけで病気が治るほどの効果を望むには少し無理があると思います。昔、薬がない時代には代替療法として飲泉を取り入れられたことがありましたが、現在は飲泉だけを療養に用いているところはほとんどありません。病気に効くところまでは発展していないので、飲泉だけで治るとはいいきれません。身体を治すには、まず近代医学、それでうまくいかない場合に、いろいろ補完的な意味で、いわゆる代替療法といっていますが、そのひとつとして飲泉が考えられているわけで、この点を錯覚しないようにすることが重要です。

飲泉の効用についてはいろいろな見解が出されていますが、まだ研究途上ですし、果たして飲泉だけでどこまで効くかということについて、はっきりと結論づけるのはまだ早計だと思います。ある程度効果はあるでしょうが、より高い効果を出すためには、入浴と一緒に行うこ

とが必要です。なぜなら、温泉の効用というのは、本質は飲むだけでなく、入浴して、楽しく語り合いコミュニケーションをとりながら、食事をしたり、レクリエ

ーションをするといった生活の中の一部として存在するからです。

 

―蓼科志楽の湯では、源泉にミツバチが群がって飲泉と入浴を楽しんだ後、45度の角度で勢いよく元気に飛び立っていました。

甘露寺: 温泉の中には炭酸ガスや硫化水素が入っているので、これらを好む蚊、ハチ、あぶなどがよく集まります。温泉動物といっていますが、動物の発見伝説は、成分の多い温泉地が多いという傾向があるほどです。動物は本能で、自分に益があるものを好む習性がありますが、通常の温泉場での飲泉はほとんど遊び飲みで、治療を目的としたものではないでしょう。

―蓼科志楽の湯では、蚊、普通のハチ、アブなどは来ず、飛んできたのはミツバチだけでした。ところで、蓼科志楽の湯の温泉水を入れた水槽と現地の湧き水を入れた水槽にそれぞれ10匹ずつ金魚を入れて、えさも空気(水槽に空気を送り込むエアーポンプのこと)も与えず13日間様子をみたところ、志楽水の方は10匹中8匹が生き残っていたのに対し、湧き水の方で生き残っていたのは10匹中2匹でした。金魚屋からは、えさも空気も与えなければ数日で死んでしまうでしょうと言われていたので、予想に反して志楽水に入れた金魚が長生きしたことに不思議に思っているんです。

資料を調べる甘露寺所長(左)と栁平所長

 

甘露寺: 生物が生きるために最も重要なのは酸素です。おそらく志楽水の方が湧き水よりも酸素を取り込む環境が優れていたと考えられます。一般に、温泉水に含まれている塩分が炭酸ガスなどいろいろなガスを吸着する性質があるといわれています。

 

―今、日本で飲泉できる所は何か所くらいあるのでしょうか。

甘露寺: 現在、日本には約3万の源泉、約3千の温泉地があるといわれていますが、その中で飲泉が認められているる源泉は100~200に過ぎません。伝統的に飲泉の習慣が根付いている所ならばよいのですが、新たな所は許可されにくい傾向にあります。飲泉については、例えば砒素の摂取は0.1mg/日以下というように、同様に銅、鉛、亜鉛、フッ素、硫化水素などについても国の基準が定められていますし、また、きちんとした飲泉施設を作らなければなりません。現在は、温泉水は温泉に泊まってそこで飲むのが望ましいですね。前に述べた遠隔効果のとおり、そこへ訪れる行為も非常に重要だからです。森林の中でハイキングをしたり、魚釣りをしたり、食事や名所旧跡めぐり、等々いろいろ総合的に行って、その人を今までとは違った方向へもっていくのを「温泉地療養」といいますが、その中で飲泉もその一部として位置付けることで、飲泉自体の効果を最大限に発揮できるわけです。

 

―本日は、お忙しいところ、貴重なお話をお伺いでき、ありがとうございました。

 

◆蓼科志楽の湯にはサルフェート(硫酸塩)が豊富に含まれています。

近年,サルフェートを含んだミネラルウォーターが注目を集めています。サルフェート(sulfate:硫酸塩えん)とは、硫酸イオンがナトリウムやカルシウムなどのミネラルと結合してできた無機化合物の総称です。サルフェートはヨーロッパの地層に多く含まれる成分で、利尿作用を持つ物質を含んでいますので、血液中の老廃物を排出させ、代謝を高める作用があるといわれています。従って、健康維持やダイエットに有効な成分といえます。

 

サルフェートは本来温泉に含まれている成分ですので、サルフェートを多く含んだ硫酸塩温泉、その中で蓼科志楽の湯のようなナトリウム―硫酸塩・塩化物温泉は、浴用では高血圧症、動脈硬化症、外傷に効果があり、また、飲用では胆汁の分泌が促進されて腸の蠕動運動を活発化するため、胆道疾患、弛緩性便秘、糖尿病、肥満症、痛風に効果があります。さらにナトリウム分を多く含んでいるため、血圧を下げ、痛みを和らげる鎮静作用があります。

 

蓼科志楽の湯の硫酸イオン含有成分は温泉水1kg中962.5mgと、

わが国で飲泉が認められている硫酸塩温泉の中ではトップクラスの高い値です。なお、他の主な成分はナトリウムイオンが657.8mg、炭酸水素イオンが438.6mg、塩素イオンが339.5mg、カルシウムイオンが80.6mg、カリウムイオンが76.5mg、マグネシウムイオンが40.6mgなどです。絶妙のバランスでそれぞれのイオンの個性が引き出されていて、低張性の温泉なのに高張性並の効能発揮が期待できます。これが“芸術的源泉”(source of arts)といわれる理由です。

 

●飲用の適応症:

肥満症、糖尿病、慢性消化器病、慢性便秘、慢性胆嚢炎、胆石症、通風

●飲用の禁忌症:

腎臓病、高血圧症、その他一般にむくみのあるもの、ヨウ素を含有する温泉では甲状腺機能亢進症のとき、下痢のとき

 

 

 

志楽ニューズレター 第十号 2009年3月30日発行

企画:グループダイナミックス研究所

発行所:志楽ダイナミックス