志楽トピックス

ホタルは希望と勇気の光を放つ!

2018年8月3日 ニューズレター
志楽ニューズレター第十五号

ホタルは希望と勇気の光を放つ

ーまず、ヘイケボタルが飛び立ちましたー

 

◆5月下旬に成虫が誕生しました。

「夏は夜。月のころはさらなり、闇もなほ蛍の多く飛びちがいたる。・・・」清少納言の「枕草子」の一節にも記述されているように、夏の夜に見られるホタルは古来よりも多くの人に愛されてきました

志楽の湯でも、縄文時代の自然に戻るためにホタルを飛ばそうと考えました。夏の風物詩として、露天風呂にホタルが舞う光景を期待して、幼虫から育てることにしました。

ホタルを幼虫から飼育することはさほど難しくないといわれていますが、初めての体験ですので、地元の矢向小学校で長年ホタルの飼育を指導されてこられた市川保夫さんにアドバイザーをお願いすることにしました。

昨年12月に、ホタルの幼虫のエサとなるカワニナを業者から取り寄せ、志楽の湯の露天風呂の小川のせせらぎに少し多めに撒きました。

 年が明けて今年の2月、カワニナの生育を確認した後、市川さんからヘイケボタルの幼虫を大量に分けてもらい、

小川のせせらぎに放流しました。同時に川崎生涯研修センターの水槽でも飼育することにしました。ヘイケホタルは水田や用水路など人間の身近な環境に生息し、日本ではゲンジボタルとともに普通に見られたものですが、自然環境汚染などで今ではなかなか見られなくなっています。ただ、ゲンジボタルよりも水の汚れに強いといわれています。

 

◆幼虫からサナギ、成虫へと成長

ホタルの幼虫は、初め水の中で生活しますが、4月頃になるとサナギになるために陸地に上がります。そこで、

4月初めに、ホタルが生育しやすくなるように小川のせせらぎの岸に盛り土を施し、セキショウを植えました(セキショウは菖蒲に似た常緑多年草です)。その葉っぱは、羽化した成虫の休息場所にもなります。

4月7日(土)には、川崎生涯研修センターにて、ホタル博士と呼ばれホタル研究の第一人者である大場信義さんをお招きして、「ホタルの育て方と楽しみ方」というテーマで講演をしていただきました。ホタルが棲む環境や、生物多様性保全へのアプローチなどへについてわかりやすく解説され、参加された方々はホタルの生態やその生育環境などに対する理解を深めました。

さて、上陸期が近づいた幼虫は夜になると発光し、陸地に這い上がろうとします。そして、上陸した幼虫は、草の根元付近の柔らかい土を探して、ゆっくり体を隠していきます。地中では、体を回転させながら粘液を出して周りの土を固めます。いわゆる土まゆづくりです。この作業を終えると、あとはじっとさなぎになる日を待ちます。

上陸しておよそ1ヵ月でさなぎになります。さなぎももちろん発光します。ただ成虫のように明滅はしません。土の中で青白く光るさなぎの光は、ホタル」の一生のうちで最も美しいと言われます。

さなぎになってから、約10日間で羽化して成虫になります。幼虫が上陸してから羽化まで40~50日間です。成虫は、しばらく土まゆの中で休み、その間に羽は黒く硬くなります。そして3~4日後の夜、地上に這い

出してきて大空へ飛び立ちます。

 

◆今後は、ホタルの自生を期待

志楽のホタルは、5月下旬に成虫になりました。5月25日(金)夜、露天風呂で暗闇の中を舞う複数の小さな光が目撃されました。また川崎生涯研修センターの水槽で飼育していたホタルたちも成虫に羽化し、光を放つようになったので、水槽を志楽の湯の渡り廊下に移し、誰でも観察できるようにしました。成虫出現時期は通常6月中旬から8月までの間ですが、今年は気温が高い日が続いたためか、早めの出現となりました。

成虫は体長10mmほどの大きさですが、夜薄暗くなると元気に光を放っています。成虫は何も補食せず水分の補給だけで1週間全力で発光し続け、交尾と産卵を終えると、天寿を全うします。

関東でホタルの光を見ながら温泉に入れるのは、おそらくここだけではないかと思います。そして来年、ゲンジボタルも舞う光景を見られることを期待しています。

また、蓼科にある八ヶ岳縄文天然温泉「尖石の湯」にも将来は小川のせせらぎを創り、ホタルが飛べる環境になればと思っています。

 

★ヘイケボタルとゲンジボタル

ホタルは、昆虫のなかまで甲虫類に属しています。

日本には約50種類、世界では約2000種が知られています。一般にホタルというと水辺のイメージがありますが、実際には幼虫が水の中で暮らすホタルは日本ではヘイケボタル、ゲンジボタルなど3種ほどで、他は陸生です。

ヘイケボタルは体長8mm前後で、ゲンジボタルより小さく、主にな用水路で生息します。幼虫はカワニナだけでなくモノアラガイタニシなど様々な淡水生巻貝類を幅広く捕食し、やや富栄養化した環境にも適応します。また時には、干上がる水田のような環境でも、泥に潜って生き延びます。

ゲンジボタルは体長15mm前後で、日本産ホタル類では大型種。成虫の前胸部中央には十字架形の黒い模様があります。幼虫はきれいなの中流域に棲み、カワニナを捕食します。

 

 

 

志楽ニューズレター 第十五号 2012年6月1日発行

企画:グループダイナミックス研究所

発行所:志楽ダイナミックス